純・情・愛・人

「宗吾さんにとっちゃ妹みてーなもんだからよ。園部が楽勝なんじゃね?今んとこ」

「べつに勝負してるわけじゃ・・・」

「おー余裕かぁ?お嬢と宗吾さん、昨日から沖縄行ってんぞ。のんびり新婚旅行も行くヒマねーからってなー」

世間話くらい軽い口調だった。

いつまでも沈まない単語が、頭の中で数珠つなぎになって漂う。ストローが刺さるグラスの水面をぼんやり見つめていた。取ってきたばかりのオレンジジュースが、絵の具を溶かした色水に映った。

今度の矢は心臓の真ん中を射貫いた。狙い澄したように一直線に突き抜け、小さくない風穴を空けて。

痛いより寒い。体に血が通わない。冷たい。凍る。心が。みるみる凍っていく。

知らなかった。・・・朝倉君はわざと?知らないわたしを嘲笑(わら)うために呼び出したの?岸川のお嬢さんの味方だから?

自分に重みを感じない。がらんどう。脳の記憶回路に事実だけを刻み。刻みながら機械的に追う。

「・・・旅行・・・」

唇の隙間から零れ落ちた。意味を考えるまでもなかった。夫婦になるなら当然だ、宗ちゃんがわたしじゃないその人を抱くことも。