純・情・愛・人

嘘は吐いていない。事実からいくつか棘を抜いただけだ。

「ちょっと一方的に言われて、言い返しちゃったからそれで朝倉君が止めてくれて、帰りも送ってもらって」

「なるほどな」

「・・・どうして広くんとは上手くいかないのかな」

わたしが宗ちゃんしか見てないから“弟”をやめたの?
弟に戻るより、思い出ごと全部を壊す方を選ぶの?

「俺と薫のことに広己が口を出すのは筋違いだ。気にするなと言っただろう」

細まった眼差しがやんわり慰めてくれる。

宗ちゃんがなにも知らないなら余計な心配はかけたくない。朝倉君が言ったとおり、わたしが広君の気持ちをへし折ってお終いにするしかない。

「ま、成るよーにしかなんねーやな」

湯飲みを手にお父さんが誰ともなしに。どこまで分かっているのか、そうじゃないのか。

「宗も薫もしっかりやれや。テメーに恥じねぇようによ」

突き放されたわけじゃなく。だけど、今までどっかしら繋いでくれていた手を(ほど)かれた気がした。オレの娘は卒業だわな。・・・サバサバと笑っている振りで。