純・情・愛・人

「泣くな。薫は堂々と俺に甘えていればいい」

頭の上に優しく乗った掌の温もり。深呼吸して顔を覆っていた両手の甲で頬を拭うと、お父さんがこっちに箱ティッシュを差し出す。

「正直オレはカオルが笑ってられりゃ、宗でもコウでもな。こないだオレんとこに顔出して、ひさびさに会ったけどよ?コウも立派になってんじゃねーか」

「・・・会ったって聞いてない」

「そーだっけか」

鼻をかみ、視線で問えば、しれっと。

「昨日会ったんだろ?カオルはどー思った?」

「どう、・・・って。大人っぽくなった・・・かな」

思わず口ごもった。

あのやり取りを宗ちゃんにどこまで打ち明けるかの、心の準備もできていなかった。お父さんが投げてよこしたボールは、ミットの中で小さくバウンドして宙に。

けれど、不自然な様子のわたしを宗ちゃんが見過ごすはずもなく。見えない指が顎にかかり上を向かされる。

「広己になにか言われたか」

まな板の鯉。ヘビを前にしたカエル。兄弟喧嘩じゃ済まなくならないよう、言葉を選んでガーゼに(くる)んで。

「宗ちゃんが結婚したら、わたしは必要なくなるから別れたほうがいい・・・って。広くんなりに心配してくれた、・・・みたい」