純・情・愛・人

瞬間。心臓が弾けるかと思った。そんな風に思っていてくれたなんて知らない。大事にされるばっかりで半分も返せていないのに、わたしは宗ちゃんの何かになれてる・・・?

「もしオレの娘をホイホイ捨ててみろや、コンクリートミキサーにブチ込むぞ?」

いつになく物騒な釘を刺したお父さんの眼が少しも笑っていないのを、宗ちゃんも毅然として頷き返した。

「肝に銘じる」

「・・・ま、遺言は預かっといてやるから、あとは二人で決めるこった。カオルもな、オレの世話ばっか焼いてねーで独り立ちしねーとよ。“嫁”に出すからにはなぁ」

「お父さん・・・・・・」

途端に込み上げ、向かいで大袈裟に桜餅を頬張る姿があっという間にぼやける。

DIYは得意でも家事はすっかり面倒くさがりで。世話を焼いてるんじゃなく、焼かされてるのに。安心して独り立ちできそうな気がまるでしないのに。

「・・・ありがとう・・・っ」

声を詰まらせながら。本当は笑わなくちゃいけなかったけど無理だった。

本当は。誰にも祝福される相手を選んで、バージンロードを一緒に歩いて欲しかったけど無理だった。

ごめんなさいお父さん。

押し寄せる切なさが涙になって溢れる。普通なら赦されない親不孝を、赦してくれる大きな愛情が胸に染みて痛い。赦すお父さんはもっと寂しくて、苦い。

それでもわたし、宗ちゃんと生きたい。
薫でよかった、って一番最後に褒めてもらえるまで。あの背中に寄り添って。