純・情・愛・人

絶妙なタイミングで割って入ったのは、座敷までわたしを連れて、すぐ消えてしまった朝倉君だった。どこから聞いていたのか、軽く宥める口調に向かいから舌打ちが漏れ。

・・・どうして分かったんだろう、『ほっといて』と言い返しそうになったこと。

「女は押せばいいってモンでもねーのよ、たまには引き算しねーと」

「一生、黙りてぇのかテメェは」

「宗吾さんの圧勝で終わっちまうかなぁ。なぁ園部?」

()めつけて凄んだ広くんをいなした朝倉君は片目を瞑り、ニンマリ口角を上げる。

不思議な気がした。広くんは若くても会長の次男だ。敬語を使うのが普通だと思うのに、そんな気安い間柄なのかと。

「コウには頭冷やしてもらっとくわ。家まで送ってやれって会長命令、オレで我慢してくんね?」

「・・・うん。ありがとう」

「コウキ、ちょっと出てくる」

「戻ったら覚悟しやがれ、豪」

捨て台詞を吐いた彼と最後に目がぶつかった。『またね』とも『バイバイ』とも言えず、小さく会釈だけして朝倉君の背中を追った。・・・逃げた。

『ごめんね』を胸の奥に置き去りにした。