純・情・愛・人

彼の(ひとみ)がわずかに歪んで見えた。束の間だった。

「ふたりで決めたの。広くんがどう思ってても、・・・どう思ってくれてても、わたしは宗ちゃんから離れない。宗ちゃんが全てだから」

心を鬼にして広くんの気持ちを振り払う。あの頃みたいに笑い合える日は、二度と来なくなるのかも知れない。

「・・・帰るね」

返事を待たずに脇に置いたバッグとコートを手に立ち上がる。自分は揺るがないと納得してほしかった。

「このまま黙るつもりはねぇよ」

追いかけてきた声が畳を踏んだ一歩を躊躇わせた。

煙草の火をもみ消しながら、おもむろにわたしを見上げた広くん。仕草が大人びて、知ってる“弟”じゃなくなったよう。

「兄貴からお前を()り返す。せいぜい俺に泣かされろ」

「されない」

「あーハイハイ、そこまでにしとけよコウキ。園部がキレそーになってんぞ?」