純・情・愛・人

一方的で強引。宗ちゃんは勝手に押し付けたり奪ったりしない。北風は太陽に敵わないのに。

「馬鹿か」

うんざりして聞こえた。

上着の内ポケットからボックスの煙草を取り出し、一本咥えて火を点ける。広くんは顔を背けて紫煙を逃すと、アーモンドアイを細めてわたしを斜めに見据えた。

「親父が合わせたがってる岸川のお嬢は、堅気で言う親会社の社長の娘なんだよ。黙って愛人作らせる可愛いタマじゃねぇぞ?」

脅しじゃない。肌で感じた。

「兄貴はどうせお前を見捨てる。永征会(ウチ)より大事なモンはねぇからな」

そんなことない。すぐさま心は否定した。だけど声が喉でつかえた。先のことは分からないと諭したおじさんの顔が過って。

「本気で惚れてるならお前と一緒になって、守ってやりゃいいだけだろうが。堅気の女に極道が務まらねぇなら、テメェが全部背負(しょ)ってけバカ兄貴。俺には真似できねぇよ、薫子を繋いで飼い殺すなんてのはな」

陶器の灰皿に軽く灰を落とし、まるでわたしを、ここにいない宗ちゃんごと突き通す鋭利な眼差し。

意味は飲み込めていた。刺々しい言葉とは裏腹に心配してくれてることも。でも。それでも。

「・・・広くんは勘違いしてる。愛人でかまわないって、わたしが宗ちゃんに約束したんだから」