純・情・愛・人

「それは広くんかと思って」

温度のない眸を受け止め、真面目に答えた。

「自覚あったのか?兄貴の人形は、脳ミソまで空になったワケじゃねぇんだな」

「・・・人形じゃないし、わたしが嫌いならこれでもう最後にするけど」

皮肉めいた言い方は嘲りというより、責めて聞こえた。敵意じゃなく怒り。分析できるくらいには冷静だった。

「教えてくれる?嫌われた理由がずっと分からなかったから・・・」

「そうやってお前はいつも、俺を見もしねぇであっさり捨てるんだよ。分かろうともしねぇだろが」

返ってきた言葉の意味を飲み込むのに少しかかった。なにかが嚙み合っていない違和感に戸惑いながら。

「ガキの時から惚れてる女が兄貴の愛人になりたがってるのを、笑えってのか。ふざけるな」

上から目線で。刺すように冷たく凄まれた。

彼の口から次々と吐き出された単語が文字の形そのまま、わたしの前に積み上がっていた。

広くんは“家族”だ。宗ちゃんの弟だからわたしの弟。死ぬまで、死んでも、変わらない。