純・情・愛・人

「下のせがれなら大も手放しで喜ぶ、死んだ(みさお)さんにも顔向けできるだろうよ。・・・なあ薫、二十年三十年先のことは誰も分からんさ。男と女は切れれば(しま)いだが、義理でも兄妹なら宗吾と一生切れねぇと思わないかい。お前が幾つになっても猫可愛がりする、筋金入りの兄馬鹿になると思うがね」

絶句した。

言葉が丸い球になって一つ一つ落ちてきては、わたしの中で転がる。小さく跳ね、カツンコツンと音を響かせる。微塵も考えなかった、宗ちゃんの家族になろうなんて。

「形ってのは色々あるもんだ。何を捨てて何が捨てられねぇか、じっくり考えてみちゃどうだい。時間はまだある、慌てなくていい」

おじさんと宗ちゃんは似ている。押し付けがましくない言い方も、淡い笑い方も。

「親の贔屓目だが広己も一端になってきてな。せっかくだ、しばらくぶりに話していきな」

え?・・・と思った時には遅かった。

「おい」

間髪入れず、障子戸越しのシルエットに向けおじさんが一言だけ。短く返答した外の人影はその場を動くことなく、誰かに指示した様子だった。

石になるってきっとこういうのを言うんだろう。広くんがもう戻ってるのを知らなかった。何よりわたしを嫌っているのは彼のはずで、おじさんはずいぶん見当違いをしてるんじゃ。0.000001%の可能性すらない、恋愛も結婚も。

「・・・あのね、」

やっとのことで凍っていた唇が(ほど)けた。だけどその先は続かなかった。