部屋の真ん中に置かれたクィーンサイズのベッド。逢う時はいつも、ここと決まっている。駅から歩いても十分くらいの分譲マンションの一室、宗ちゃんのセカンドハウスだ。

寝室とリビングの他は扉の数からすると2LDK。エントランスやエレベーターですれ違う住人は年配の夫婦だったり、子供の声はあまり聴こえない。街の雑多な音以外とても静か、いつ来ても。

果てたあと、宗ちゃんの腕枕で余韻に浸っているときが一番好きかもしれない。言葉は無くても、髪を撫でる指先が温もりが、わたしを大事に愛おしんでくれる。

有馬(ありま)宗吾(そうご)とわたし、園部(そのべ)薫子(かおるこ)は、父親が親友同士の、血の繋がらない親戚くらいに子供の頃からお互いよく知っている間柄だ。

宗ちゃんは今年でちょうど三十歳、わたしは四つ下。学生服を着る年頃になった宗ちゃんは見違えて恰好よくて。大好きなお兄ちゃんにあっという間に恋をした。

『宗ちゃんが好き・・・!』

真剣な告白も妹扱いで、優しくあしらわれていた。自分の誕生日にデートを強請ったみたり、バレンタインやクリスマスは彼女がいてもいなくても、欠かさずプレゼントを手渡しに行った。

高校の卒業祝いに何が欲しいかを訊かれ、『ファーストキス』と答えた。本気だからと涙ぐんだわたしに、宗ちゃんは観念したように微笑み、両頬を掌で包んで大人のキスを教えてくれた。

二十歳(はたち)のお祝いは欲しいものを訊かれなかった。連れて来てくれたのはナイトクルーズのフレンチディナーで。ドレスから何から何まで、宗ちゃんはシンデレラの魔法使いのようだった。

そのあとスィートタイプのキャビンに招かれ、ずっと欲しかった宗ちゃんを、惜しまずわたしにくれた。すべてを晒してくれた。わたしも晒した。隅々まで知って欲しかった、心も躰もぜんぶ宗ちゃんのものだと。

今も全身全霊で愛してる。
愛してる。