純・情・愛・人

ふっと、はち切れそうになっていた苦しさが透き間から少しずつ抜けていく。胸の真ん中に仄かな温もりを取り戻す。

当たり前にそこに在ると信じて疑わなかったものを失うのは、生きてきて二度目。一度目は宗ちゃんが埋めてくれた。

今のわたしを掬いあげてくれるのは。大地と、それから。

奥底から深い息を逃す。手足に力を込めノロノロ立ち上がると、ぬるま湯で涙を流した。これきりにしよう。宗ちゃんを想って泣くのは最後。

化粧台の三面鏡に映る泣き腫らした顔。自分で自分の両頬を叩く。

大地の幸せのために精いっぱい笑おう。前を向いてうつむかない。どれが正しくてどこを間違ったのか答えを探しながら。

それが償いになるとは思わないけど。愛してくれたひとにせめて、恥じないわたしでいよう。

まだ眠っている大地の様子をのぞいて、清々しい光が射し込むリビングに戻る。今日も洗濯物がよく乾きそうな好い日和。

いつもなら朝風呂を終えた広くんが、短パン姿で半乾きの髪のままキッチンに立っているのに。

「まだ帰れないのかな・・・」

具合が気になり、メッセージを入れてみようかとスマートフォンを手に取ったと同時、着信音が鳴り響いて落としそうになった。

「も、もしもし、広くんっ?」

『・・・なに慌ててやがる』

「ちょうどわたしもメッセージ送ろうとしてて・・・!それで怪我は?大丈夫?お医者さんはなんて?」

矢継ぎ早に口から飛び出した。