純・情・愛・人

別のことを考えないと『もし』が溢れそうで、『どうすれば良かったの』に圧し潰されそうで。頭の中をわざと広くんの心配で埋めた。大地と三人の、これからで埋めた。

笑って大地に『おはよう』が言えなくなる。大地のお父さんは園部広己、って胸を張れなくなる。言い聞かせた。

湯上がり用のガーゼワンピースを被り、洗面化粧台で髪を乾かす。指で梳く毛先がドライヤーの熱風に舞うのを、鏡越しにぼんやり見つめ、唐突に息を忘れた。

ない。下げていたはずのネックレスの指輪がどこにもない。懸命に記憶を辿った。そうだ、何も着けていなかった。宗ちゃんのベッドで目を覚ました時には・・・!

宗ちゃんの凍った眼差しが蘇った途端、堰が切れた。

あの指輪は、わたしと大地と宗ちゃんを繋ぐたったひとつの証だったのに。捧げた愛に嘘はなかった、たったひとつの証だったのに。きっと捨てられてしまった。宗ちゃんにとってもう、なんの価値もない輪っかだ。

頭を撫でてくれた掌の温もりが、名前を呼ぶ優しい声が彼方にさらわれていく。待って。置いていかないで、お願い!

床にしゃがみ込んでむせび泣いた。心はまだこんなに宗ちゃんを愛してる。愛してる。愛してる。

愛さえあればすべて叶うと信じた二人だった。愛だけじゃ、どうにもならなかった。

枯れるほど泣いた。このまま石になりたかった。悲しみも痛みも感じない何かになって永遠に眠ってしまいたかった。

宗ちゃんに殺されてしまえば良かった。

大地の愛くるしい笑顔が瞼の裏をよぎった。