純・情・愛・人

「・・・じゃあ今度、お父さん直伝でわたしが作るね」

「おう」

隣の席同士だったのはほんの数ヶ月。ささいな日々を忘れずにいてくれた彼は、シャーペンを銃に握り替えた。それでも朝倉君の言う貸し借りには、友情っていう名札がぶら下がって見えた。

クラスメイト以上友達未満。多分これからも。肉団子のしょっぱさを忘れないでいてくれるかぎり。

気が付けば、明るんで色の付いた景色が視界を流れ始めていた。マンションに着いたとき、夢から醒めたような、遠いどこかからようやく帰ってきたような、安心と空虚さが入り混じったなんとも言えない感傷が込み上げた。

長い一日だった。
ずっと夜だった気がした。

大地を抱えて玄関先まで送ってくれた朝倉君にシャツを返す約束もして、広くんのことをくれぐれも頼む。

「アバラやられたくらいじゃ死なねーって」

痛みをかなり我慢していたらしい広くんが一緒に車を降りかけたのを、止めたのは彼。意地張るところが違うと、知り合いに診てもらうことになったのだった。

「園部も目の下、クマすげーぞ?」

ニンマリ笑って手を振った朝倉君の背中がドアの向こうに消え。サークルベッドに寝かせた大地の様子をしばらく見守って、疲れ切った体を引き摺りシャワーを浴びた。

頭の天辺に打ち付ける熱めのお湯が、絶え間なく肌を伝って爪先まで滴り落ちる。洗い流されていく宗ちゃんのなごり。無数に散らされた紅い痕だけは、わたしを呪って消えない。