純・情・愛・人

今はまだ。宗ちゃんがくれたものでいっぱい。思い出なのか傷なのか、名前の付け方さえおぼつかない。

わたしは、わたしが知った広くんに、ひとりの男として人間として惹かれている。今やっと、北風にも負けない陽射しに若葉を広げ始めている。

空に向かって背を伸ばし、蕾をふくらませ、遠くないいつか、花を開かせるまで待っていて。

(はがね)の花にはなれなかったけど、枯れない花でいるから。広くんのそばで。

・・・笑って約束できる日が来るのを信じてて。



戻った朝倉君が何もなかったみたいに車を走らせ始めても、わたしと広くんは黙って体を寄せ合っていた。

どこへ向かっているのか、やがて到着したのは静まり返った住宅街に二棟ならぶアパートの前。

「すぐ戻ってくっから」

コンビニにでも寄るような口ぶりで運転席のドアを閉めた朝倉君。窓越しに夜明けを待つ空は、真夜中とは濃さが違って見えた。

「ヘイお待ち」

10分と経たずにスライドドアを外から開いた彼が、腕に抱えていたのは大地だった。違う服に着替え、泣きじゃくった様子もなく、ぐっすり眠る我が子には拍子抜けしたくらい。

「うちのはダイチよか、デカいんだけどよ。一人も二人も変わんねーって、嫁が面倒みてたんだわ」

あくびを噛み殺しながら、足許に置いてくれた手提げ袋から覗くのは、口の開いた紙オムツのパッケージやおしり拭き、着せていた服。

朝倉君が結婚して子供がいたことも初耳だったけど、大地は有馬の家に連れ去られたはずだ。