純・情・愛・人

「・・・人形にもならない女に用はない。薫を連れて出て行け、お前とも今日限りで兄弟の縁を切る」

向けられた敵意に動じてもいない宗ちゃんが、低く放った。

怒りさえ凍えた矢が突き刺さる。貫いた心臓に死ぬまで残るんだろう。いつか焼かれたら・・・白い骨の合い間に残ってるんだろう、懺悔と愛ごと黒い灰になって。

わたしは大地を、宗ちゃんは永征会の有馬宗吾を、守りたいものの優先順位を譲れなかった。自分を曲げられなかった代償にふたりは罰を背負う。確かにあった未来を失う。

「こっちも用なんざねぇよ・・・。コイツの前に二度とツラ見せんな、・・・せいぜい極道と心中しやがれ」

広くんが睨み据える。挑むように。

「今度大地に手ェ出してみろ、一秒で永征会を警察(サツ)に売り飛ばす。見くびっててもかまわねぇぞ・・・?」

宗ちゃんは何も答えない。その切り札が本物だと知っているように。

「そーいや岸川(ウチ)の組長から伝言っスわ」

世間話くらいの軽さで朝倉君が横から挟んだ。

「可愛い娘が泣いて頼むからしょーがねぇってよ?じゃなきゃ愛人(オンナ)子供(ガキ)も、とっくに海の底だとさ」

瞬間。それまで底無しの闇だった宗ちゃんの眼差しが微かに揺れた。