純・情・愛・人

「コウはどーでも、園部に借り返さねーと」

『借り』の意味を探す余裕もなく、もどかしい手付きでボタンを下まで止め終わると、朝倉君がこっちに何かを(ほう)った。床を滑り転がってきたのは折りたたみナイフ。そのサインに気付き、急いで手を伸ばした。

「ついでにウチのお嬢が世話ンなってる礼もしときゃいーかって、カンジっすかね」

皮肉めいた科白は背中で聞き流した。とにかく麻袋を外そうと結束バンドに刃を当てがう。

「すぐ外すね、動かないで」

「・・・豪のヤツ遅ぇんだよ」

やっとのことで拘束を解いた広くんの額や頬には、血のこびりついた擦り傷があった。体を起こす時もひどく顔を歪ませたのを、支えながら泣きそうになる。

「大丈夫?病院に・・・!」

「バーカ、死にはしねぇよ・・・」

傍らに寄り添い、濡らしたタオルでそっと傷を拭う。ソファに体を沈めた広くんのスーツはしわくちゃで、どんな乱暴をされたのかと目を覆いたくなった。その命令を下したのは紛れもなく宗ちゃんなのだ。

「・・・座れよ兄貴。薫子もこれでケリにしやがれ、・・・今しかねぇぞ」

ガラステーブルの角を挟んだ一人掛けのソファに、促された宗ちゃんが無言で腰を下ろした。朝倉君は、もしかして本物じゃないのかと思うほど平然と銃を手にしたまま、脇に立つ。