純・情・愛・人

「俺は俺だ。最初から」

揺らぎなく聞こえた。

「これがお前の惚れた男だ、よく目に焼き付けておけ」

反転した視界。あっという間だった。強かに背中を打ちつけ、床に仰向けにされていた。

「薫子ッッ」

音と震動で伝わったんだろう、横倒しのまま広くんがパイプ椅子ごと藻掻いて、鬼気迫る。

「なに、しやがったッ、クソ兄貴・・・!!殺すぞっ・・・っっ」

「そうだな。今ここで殺せば、俺を恨んで死んでも忘れないな?薫」

広くんが何かを叫んで。長い指がわたしの喉元に巻き付く。

怖くて涙が溢れたんじゃない。見下ろす宗ちゃんが儚そうに微笑んでいたから。傷ついた眸で見つめていたから。

どうして届かないんだと。
声にならない声が響いたから。

締め付けられる力が徐々に増す。誰より愛したひとの為に死んであげられるなら、それでもいいかな。どこかで思った。

無抵抗に瞼を閉じかけた刹那。

「ワリーんだけど、園部を放してくんないスかねー」

突然、軽口が割り込んだ。指先の力が緩み、ふいに解放されて大きく喘ぐ。

「・・・相変わらず目障りなネズミだ」

ゆっくり立ち上がると、振り返りもせず低く凄んだ宗ちゃん。まるで朝倉君が来るのも見透していたような。

「有馬を捨てた広己に義理立てするタマだったか」

「義理っつーか、まあイロイロっすわ」

あられもない姿で茫然と座り込むわたしへと、ソファに脱ぎ捨ててあったシャツを投げてくれた彼は。左手の銃口を宗ちゃんに突きつけながら、シニカルに笑った。