純・情・愛・人

苦しげに振り絞った広くんの声が胸に迫る。見えない腕を精いっぱい伸ばして、奈落に落ちそうなわたしを離すまいとしてくれる。

被せられた麻袋は首許で括られ、簡単には外せない。さっきよりも荒くなった息遣いにどうしていいか分からない。

「俺のものを俺がどうしようと勝手だろう。・・・来い、薫。広己を生かすも殺すもお前次第だ、分かっているな?」

背後から冷淡に言い放った宗ちゃんがわたしを引き剥がそうとして、咄嗟にその手を払いのけていた。振り仰いで、湧き上がった衝動のままに自分を止めなかった。

「いい加減にして・・・!ひとの命も人生も宗ちゃんのオモチャじゃないっ、どうしてそんな言い方するの?!宗ちゃんは違うって信じてた!!」

有馬宗吾が極道の中の極道だったとしても。大地や広くんを盾に、脅すような真似は絶対にしないと信じていた。わたしの前ではただの男だと、だまし続けてほしかった。

「大地を返して!!もう父親じゃなくていい!もう、わたしの宗ちゃんじゃない・・・!!」

こんな激しい怒りを誰かにぶつけたことは一度もなかった。ただ裏切られて口惜しかった、哀しかった。

宗ちゃんの愛がニセモノに代わって。
泡になって消えた、愛したはずの人が。