純・情・愛・人

たとえ明るい庭付きの家で水入らずで暮らせたとしても、大地が陽だまりの中で生きられないなら。たとえ宗ちゃんがわたしだけのものになったとしても。心から幸せになれない。

わたしが願った愛の形と、宗ちゃんが貫きたい愛の形は、どこかを削り合わないと重ならない。・・・二人とも形は変えられない。だから。

「俺に出来ねぇことがあるかよ」

不敵な眼差し。その瞬間、広くんのあいだで爆ぜたものがなんだったのか。

「黙って信じやがれ」

上着の内ポケットから抜き取ったスマートフォンで誰かに電話をかける仕草を、わたしはぼんやり目で追いかける。

「行け、豪」

『リョーカイ』

たったそれだけの短いやり取り。相手は間違いなく、清音ちゃんが生まれる前に岸川組に戻った朝倉君だ。反応した宗ちゃんが低く凄んだ。

「朝倉に何をさせた・・・?」

「大したことじゃねぇよ、俺が園部に婿入りするだけだからな」

黒檀の座卓の上に、画面を閉じたスマートフォンを置いた広くんがあんまり淡々としていたから、意味を咀嚼するのに時間がかかった。

「・・・むこいり・・・?」

口が無意識に単語をなぞる。

「今日から大地の父親は俺だ、薫子」

風を切った銀光の矢が心臓をつらぬき。息を忘れる。