純・情・愛・人

初めての子育ては本や雑誌に書いてあるとおりにはいかない。生きていたら先生になってくれたはずのお母さんもいない。正解を探して迷路をさまよう毎日。

宗ちゃんの前では吐けない弱音も、広くんには簡単に吐かされた。『できねぇなら言え』と何度も怒らせた。そのたび差し出される手が力強くなった。心配と不安が塗り替えられていった。

「広くんの“優しい”は口先だけじゃないって、わたしが誰より知ってる。出まかせを言うかどうかも・・・」

「・・・・・・情が移ったか」

宗ちゃんと目を合わせられない。
鬼のような顔をしてるかもしれない。
冷たく見下されてるかもしれない。
俯いたまま首を横に振る。

「・・・わたしが折れたら、大地の人生は極道(それ)しかなくなっちゃう。宗ちゃんにとって跡継ぎがどんなに大事かも分かってるの。分かってるから折れそうになる、宗ちゃんに嫌われるのが怖くて楽な方をえらびたくなる。でもわたしはお母さんだから」

大人は自分で歩ける。嫌なら逃げられる。自由がなにかも知らない大地を守れるのはわたしだけ・・・!

「宗ちゃんのことはわたしが一番わかってる、決めたことは曲げない・・・って。だから、」

胸の奥の奥できつく噛みしめる。今から言おうとしている言葉に一生後悔する覚悟を。

ゆるゆると顔を上げ、曇りも迷いもない黒曜石色のアーモンドアイに乞う。

「・・・たすけて広くん」