純・情・愛・人

子供の頃は一人っ子のわたしのお兄ちゃん代わり。初恋で初めての人で、他はいない、宗ちゃんしか知らない。宗ちゃんだけで埋め尽くされていた、お母さんになるまでは。

愛情が傾いたんじゃない。重さは少しも変わってなんかいない。約束も誓いもちゃんと(ここ)に刻んであるの。

だけどそれでも。大地の真っ新な世界を、暗い血色に染めてしまうのは耐えられない。父親の宗ちゃんにこそ汚してほしくない。守ってくれると思ってた、琴音さんを選んだ形だけの結婚はその為なんだと信じてた・・・!

巻き付いた鎖に絞めつけられながら最後の勇気を振りしぼる。

わたしの答えは百かゼロじゃなくちゃいけない。必ず何かを失って、泣いて、後悔する。両膝の上で握った拳が小さく震えた。

「・・・・・・・・・広くんがずっと苦手だった。昔の広くんはいなくなったんだと思ってた。でも違ってた」

精いっぱい言葉を紡いでいく。ただ。嘘も誤魔化しもない、ありのままを。

「大地がお腹にいる時も、無事に生まれてからも文句も言わないでわたしを助けてくれて・・・。上辺だけの優しさとか親切でできることじゃないのに、広くんは投げ出したりしなかった。広くんがいてくれなかったら、・・・広くんじゃなかったら、わたしはちゃんと大地のお母さんになれてなかった」