純・情・愛・人

「代わりをいくらでも作ってやるから大地はよこせ、だろ。腹割って話せよ」

「・・・広己は黙ってろ」

「返す気もねぇクセによく言いやがる。ロクでもねぇな、ヤクザは」

「さっきから何が言いたい」

「ガキを物扱いしやがる言い草が気に入らねぇだけだ。薫子にとっちゃ大地の代わりなんざいねぇぞ」

胸が小さく震える。広くんの手はいつも、あっけなくわたしの心を掬い上げてしまう。今も。

黒の三つ揃いにえんじ色のシャツ、光沢のあるグレーのネクタイを締めた姿は凛として冷静、宗ちゃんの風格にも劣って見えない。

並ぶ二人の前にいるのも数年ぶりだった。記憶の中の彼はもっと挑戦的で、兄に張り合う対抗心が幼く映った。宗ちゃんと違う大人になった。もう一度気付かされた自分がいた。

「笑わせんなよ、カタギの女だから一緒にならなかったんだろが。だったら兄貴はコイツと息子の人生に手ェ出すな、筋が通ってねぇんだよ」

上から目を細めた男らしい横顔。息を呑む。

胸に響く。
胸を打たれる。
胸が詰まる。

しめつけられる。
くるしい。
いたい。

この痛みを。
この痛みの名前を。
わたしは知っている。

知っている。