純・情・愛・人

途中から眠そうだった大地は、持ってきたベビー布団を脇に敷かせてもらい、天使の寝顔をのぞかせていた。

「端午の節句は、せがれの兜を引っ張り出してこねぇとな」

孫娘の初節句を置き去りに、お猪口を手にしたおじさんは上機嫌だった。

「こないだまで宗吾も広己もガキだと思ってたが、ようやく俺に追いついてきたか」

「早ぇーよなぁ、あんな小っちゃかったカオルが母親だもんよー」

お父さんもしみじみと。大地の成長の節目ごとに、わたしもそうして月日の流れを実感するんだろう。

「そういやなぁ薫。聞いてると思うが、大地を有馬(うち)の籍に入れる気はないかい」

世間話と同じくらいの軽さで不意を突かれた。口の端を緩め、穏やかな口調に畳みかけられる。

「俺としちゃ、可愛い娘を惚れた男と一緒にしてやれなかった罪滅ぼしの気持ちもあるのさ。大地が跡を取れば、お前に肩身の狭い思いをさせずに済む。堂々と宗吾の女でいられるだろうよ。どうだい、家を建ててやるからこっちで大地と暮らすってのは。ダイを呼んでかまわねぇし、宗吾も存分に父親らしくなれりゃ一石二鳥だ」

それは、つまり。

「薫から大地を取り上げようなんざ、考えちゃいないから安心しな。将来、跡目が務まるように宗吾の傍で勉強させてぇのが本音だよ」