愛は手から零れ落ちる


それから数日したある日、牧村さんが店に来た。

「牧村様、いらっしゃいませ。本日はお一人ですか? 」

「朋美ちゃんだったね。僕が一人で来ちゃダメ?」

「いえ、そんなこと・・・失礼いたしました。」

「君さ・・・西崎とデートしてるよね? もう西崎に抱かれたの?」

「いえ・・・そんな・・・」

「西崎は今日来ないよ。もうさ、会わないでくれるかな西崎と・・・」

「えっ?」


櫻井君が牧村さんとの話に割って入った。

「牧村様、いらっしゃいませ。カウンターどうぞ。本日もいつものでよろしいですか?」

「ああ、そうだな今日はバーボンをロックでもらおうかな。」

「はい、承知いたしました。」

櫻井君が・・・また助けてくれた・・・


私は家に帰ってから櫻井君に電話をした。

「櫻井君・・・今日はありがとう。」

「牧村のやつ、嫉妬深いな。西崎はもしかしたら牧村から離れたかったのかもな。でも難しそうだ。ご愁傷様。」

「櫻井君・・・いつもありがとう。私もう西崎さんとは会わない。」

「そうか。まあ、その方か身のためだ。」

「うん。私・・・あの・・・」

「俺、眠いから切るぞ。」

櫻井君はプツッと電話を切った。


私は西崎さんの誘いを断った。
お店で会いましょうと、優しく伝えた。
西崎さんは素直に聞いてくれた。その後も西崎さんは牧村さんと二人で良く店に来たが、西崎さんが私に目を配ることは無くなった。
それでも牧村さんはたまに私に見せつけるような行動をした。


私はバーという場所にいろいろな意味で慣れてきた。
そして格好にも気を遣うようになっていた。
それと共に、お客様から誘われることも増えた。
私は西崎さんのことがあったので、それ以降は誰の誘いにも乗らなかった。