「そ、それはつまり、どういったことでしょうか?」

一生は、受話器を持つ手に力を込めながら、相手の声に集中する。

「そやから、わしの作品、そちらさんで取り扱ってもらわれへんかと。よかったら、どっか隅っこにでも置かせてもらわれへんか?」

聞こえてきた清河のセリフを、頭の中で反復する。

「つ、つまり、清河様の作品を、当ホテルで販売させて頂けると?」
「まあ、そういうこっちゃ。そちらの、アーケードやったか?ええ品ばっかり置いてあったわ。こだわって選んどるのが分かった。それにおたくらは、人がええ。あんたらやったら、わしの作品任せられる。構わへんか?」
「そ、それはもちろんです。こちらこそ、よろしくお願い致します」

一生は立ち上がり、しきりに頭を下げる。

「よかったわ。あれからな、どんどん作る意欲が湧いて、止まらんのや。うちの狭い店には並べ切れん。ほな、早速いくつか送らせてもらうわな」
「ありがとうございます!近々京都にうかがって、改めて詳しいお話をさせて頂きたいと思います」

花瓶のお礼を言うために電話をかけたが、思いもよらない話の流れに、一生は気持ちが高ぶるのを抑えられなかった。