「…芽来。大丈夫だ、ここにあの男はいない。
俺とお前、2人しかいないんだ。」


「い、いや、誰か、たすけて、いや!」


「芽来。」



一条さんは、震えの止まらないわたしを優しく抱きしめてくれた。


それでも、身体の震えは収まらなくて。
どんどん声まで出てこなくなる。



「…ぁっ、はっ…ぁ…。」



呼吸の仕方が分からない。
どんなに息を吸っても吐いても、上手く出来なくてどんどん苦しくなる。


いや、いや、いや!
来ないで来ないで!気持ち悪い!



「芽来。大丈夫だ、俺を真っ直ぐ見ろ。」


「…はぁっ、ぁ…いち…っ…。」



わたしを抱きしめながら、わたしの頬に触れる一条さん。
その手は、あったかくて。優しくて。
わたしを見つめる眼差しは、穏やかで。
少しづつ、気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。