「俺は実際にお会いするのは初めてなので、またお目覚めになったらご紹介して下さい。」


「…ああ。そのつもりだ。」



怖かっただろうな…。
物怖じしない、気の強そうな芽来がこんなに泣くなんて。
それもそうだ、まだ高校生なんだから。



「心に残らなきゃいいが…。」



噛み締めすぎた唇から血が垂れているのを、そっと指で拭う。

余程、ストーカーに悟られないようにしていたのがまた芽来らしい。



「若、着きました。」


「…ああ。」



蒼樹が車のドアを開けると、芽来に掛けたスーツごと横抱きにして部屋へ向かう。


軽いな。
ちゃんと飯食ってんのか?
背はそこそこある方だとは思うが、それにしても軽すぎる。
起きたら何か飯でも食わせるか。