春風、漫ろに舞う

「…一条さん…助けて…。」



もう、どうしたらいいか分からなくて。
ただ安心したくて。
気がつくと、わたしはそう呟いていた。



ーー「芽来。もう大丈夫だ。」



その瞬間。
後ろから、ふわっと何か温かみを感じて。
どこかで嗅いだことのある柑橘系の香りがわたしの鼻をくすぐった。



「…いち、じょう…さん…?」


「遅くなってすまない。
安心しろ。あの男は十葵が捕まえている。」


「…あ、ぁっ…。」


「怖かったな。もう安心しろ、俺が傍にいるから大丈夫だ。」



嘘、なんで…。
なんで一条さんがここに…?
どうして…?



一条さんの腕の中から、チラッと後ろを見ると本当に十葵さんが男を捕まえていたし。

聞きたいことも言いたいことも沢山あるはずなのに。
わたしは、安心したのか涙が止まらなくて。
子どもみたいに声をあげて泣いていた。
その間、一条さんはずっとわたしを抱きしめていてくれた。