「…分かった。
帰ったらメール見てみる。ありがとう。」



宴会場から離れたところにある、一室を借りて柊との電話を手短に終わらせる。

幸いな事に、みんな宴会に出席してるらしく人気もなく閑散としていた。



「…やだ、ちょっと崩れてる。」



前髪、ちょっと乱れてる。
リップだってご飯食べたから落ちてる。


スマホを鏡代わりにして、軽く整えてから。
わたしは来た道を戻る。



「ーー大丈夫だったか?」


「うん。柊だったから。」


「…他の男と話すなよ。」


「ごめんね、もう終わったから。」



他の人と談笑中だったけど。
わたしが戻ると、すぐにわたしのところまで来てくれた藤雅と手を繋ぐ。


少しの時間だったのに、藤雅は寂しかったみたい。
可愛い。



「帰るか、芽来。」


「…いいの?」


「ああ。…俺と芽来はそろそろ帰る。
蒼樹、飲んでねえな?」


「勿論です。車を用意して参ります。」


「また来なさい、芽来さん。藤雅。」


「またね!芽来ちゃん!
今度はゆっくり甘いものでも食べましょー!」


「…ありがとうございます。
ご馳走様でした、美味しかったです。
失礼致します。」



手早く車を手配した藤雅は、わたしが終わるまで待っていてくれて。
わたしの腰に腕を回して、そのまま宴会場を後にした。


何かを話すこともなく、長い廊下を2人で歩く。
藤雅に寄り添いながら。



「良かったの?」


「あれだけいれば十分だ。
疲れただろ?…付き合ってくれて、ありがとう。」


「ううん。こちらこそ。
…連れてきてくれてありがと。」



多分、藤雅は。
わたしが途中から疲れてきてるのにも気づいていたから、ああやって切り上げてくれたんだと思う。

自分のやった事も、気にしていそうだから。