春風、漫ろに舞う

「愛してる、世界でお前だけを愛してる。」



2人のベッドの中で。
規則正しい寝息をたてる芽来を、抱きしめながら俺は起こさないように。
小さく声をかける。

その細くて小さい手を壊れないように、大切に包み込むように握った。



「…いいよ、お前は。
そのままでいて。
お前が俺の生きる意味だから。」



何も考えなくていい。
何も気にしなくていい。


お前が呼ぶなら、俺はいつだってどこにいたってお前のところに行く。
全てを投げ捨ててでも。



「…き…ょ…。」


「ん…?」


「……ぁ…う…。」



顔を顰めて、魘されてる芽来。
抱きしめる腕に力を少しだけ込める。


大丈夫。
芽来には、俺がいる。
夢の中でなにを見ているか分からんが、お前は独りじゃない。

そう思っている事が伝わるように、芽来を抱きしめた。



___________________________




「37.8…。完全に風邪ひいたな。」


「…やらかした。」



翌朝。
いつもより、ぼんやりして心做しか顔の赤い芽来。
もしかして、と思い体温計を渡せば表示の通りで。
それを見て、諦めたようにベッドに再び沈んでいった。



「今日はお休みだな。」


「……はい…。
…文化祭の準備、行きたかった…。」


「楽しみにしてるんだもんな。
芽来のクラスは何するんだ?」


「…カフェ…。
男子は、メイドで…女子は、執事する…。」


「面白そうだな。行ってもいいか?」


「…だめ…。恥ずかしい…。」



布団を頭まで被って顔を隠した芽来。
それが可愛くて、もっと顔を見ていたくて。
布団を剥がし、顔の赤い芽来の頬を撫でる。


嬉しそうに、目を細めながら擦り寄ってくるのがまた愛おしい。