「芽来。」


「ん…?」



病室で藤雅と2人。
藤雅の腕の中で、小さく言葉を交わす。


ゆったりとした穏やかな時間が流れているから、自分が死のうとした事も忘れてしまいそうになる。



「ひとりにしてすまなかった。
不安だっただろう。」


「…不安だった。
だけど、何かあるんだろうなって思ってたから大丈夫。」


「ありがとう。
俺は本当にお前に救われてる。」



藤雅は、空白の時間を埋めるかのように。
あったことを色々話してくれた。

組の抗争があったこと。
そこで、藤雅が怪我をしたことも。



「今はもう、痛くないんだよね…?」


「ああ。
ほとんど完治している。
…お前にそんな顔をさせたくなかったから、言わなかったんだけどな。」


「…?」


「心配そうな、悲しそうな顔。
お前はずっと笑ってりゃいいんだよ。」



キスをしつつ、わたしの髪を弄って遊んでいる藤雅の顔は穏やかそうで。
本当に、痛みとかはないように見えた。


藤雅は過保護だし、心配性だけど。
わたしには心配かけないように、色々配慮してくれるから。
嬉しいけど、それが少し寂しく感じる時もある。

わたしだって、藤雅の心配したい。