煌びやかなランウェイ。
視界の司会の人の声に合わせて、わたしは足を踏み出した。


わたしに向けられる眼差しが、より一層わたしを奮い立たせる。
わたしは、煌月の巡。
今ここにいるのは、芽来じゃない。

そしてこれはファッションショーだ。
主役はわたしじゃない、三橋さんが造り上げたこの服が主役。
あくまでわたしは、マネキンにすぎない。



「綺麗だ…。」


「このモデルはどこのモデルだ?
見たことがないぞ!」



聞こえてくる歓声を横目に。
この和服が映えるように、背筋を伸ばして。
わたしはゆっくりと袖をひろげた。


見て、この服。
素敵でしょ?綺麗でしょ?
着たくなるような服でしょう?



綺麗に魅せる歩き方なんて知らない。
わたしには分からない。
モデルの技術なんてないから。


だけど、わたしなりに。
ランウェイの事なんて何一つ分からないわたしなりに、この服を輝かせて魅せる。