「若並びに若姐の周辺の警備を強化するように手配する。」


「十葵、なんか変わったな。」


「ええ?なにがよ」



スマホで各所へ連絡をいれているときに、蒼樹がそんなこと言うから。
素っ頓狂な声が出た。


俺が変わった?
いつも通りだと思っていたけど、確かに芽来ちゃんに出会って変わったのかもしれない。
もちろん藤雅の女だから下心なんてないし、そもそも俺は可愛い系がタイプだし。
芽来ちゃんの憂いのあるクール美人系も好きだけど、やっぱり可愛い系が良い。

だけど。
今まで、藤雅の周りや俺たちの周りに寄りつくのは、何かしら自分に利益のある見返りを求める水商売のけばけばしい女たちがほとんどだったから。
辟易して、女なんてこんなものかと思っていて割り切っていたくらいだ。
その中で芽来ちゃんは、全く違うタイプで。
守りたいと初めて思えた女の子だった。



「…確かにな。
変わったのは、若だけじゃなかったか。
恐ろしい女の子だね、芽来ちゃんは。」



ははっと、笑いが口から零れた。


そうか、変わったのは俺もか。
俺に対して、藤雅の付き添いだと言わずに「十葵」と名前を呼んで。
俺を一人の人間だと扱ってくれた時から、俺の守らなきゃいけないものから…守りたいもの、守るべきものに変わったんだ。



「帰ったら、一仕事しますかあ。」


「手伝わせてください。」


「おうよ。」



若の唯一無二の居場所。
守らせて頂きます。