きっと数秒だと思うけど。
今のわたしには、何十分も待っていた気持ちで。
変な冷や汗が背中を伝うのを感じた頃、藤雅は戻ってきて。
床に座り込んだわたしをいつもより強い力で抱きしめた。

ぎゅっとした、それが苦しいと思いつつもその苦しさに安心するわたしがいる。
頬に添えられた藤雅の手にそっと自分の手を重ねたら。
だんだんと呼吸が出来るようになってきて体内に酸素が回るのが分かった。


あれ…?
この匂いは…?

気になって藤雅の顔を見ると、心配そうにわたしを見ていたけど。
優しく微笑んでくれた。



「いつもの香水かけてきた。
これなら安心するだろ?」


「ありがとう…。」


「ついでにベッドにもかけてきたから。
これですこしは安心して寝れるか?」


「うん、うん…。」



藤雅の優しさと配慮が嬉しくて。
自然と、腕の中で目を瞑る。


この腕の中は安心する。
心地良くて、まるでゆりかごのようだ。

藤雅は、わたしを守ってくれる。わたしを理解してくれる。
ここは、わたしだけの特別な場所。
誰にも渡さない、誰にも穢させない。
たとえ、わたしが壊れようとも。