藤雅たちから背を向けて、一心不乱に食べるわたし。
何してんだろ…と思うけど。
あの場で、ご飯を食べるのはしんどい。
かといって、食べずにおなかを鳴らすのも恥ずかしいし気まずい。
だから、これで良かったんだ。



「…いつから、こんなに神経質になったかなあ。」



そっとシャツの左袖をめくる。


わたしが長袖を手放せない理由。
誰にも知られたくない、わたしすらも知りたくない。
これのせいで海にも入れないし、藤雅の前で裸になることもできない。

一緒にお風呂に入るときは、タオルで隠して事なきを得ているはず。


いや、もしかしたら藤雅は気が付いているのかもしれない。
だけど、わたしに気を遣って何も聞いてこないだけかも。
それならそれでいい。
知らなくても、何も困ることはないから。



「これだけは、藤雅にも…。」



袖を元に戻して。
ぎゅっと袖を引っ張って握りしめる。


はやく藤雅のところに戻ろう。
あんまり時間がかかると、怒っちゃうかもしれないから。
怒るまではいかなくても機嫌が悪くなるかもしれないし。