春風、漫ろに舞う

「今日はありがとう。
じゃあ、ここで。」


「あ、巡。」


「ん?」



会計を済ませた後。
お店の前で別れようとした、わたしの腕を柊は掴んだ。


お金は割り勘でしっかり払ってるし、大丈夫だよね。
まだ話さなきゃいけない事とかあったっけ?



「もう1件だけ、どこか寄らない?
もう少しだけ一緒にいたい。」


「え、あ…。
なにかあったの?」



珍しいな、柊がこんなこと言うなんて。
どうしたの?


戸惑いもあるけれど、俯いている柊がどんな表情をしてるのか気になって。
下から覗き込もうとしたら。



「ーー芽来?」


「…!」



わたしの後ろから声が聞こえてきて。
ハッと後ろを向くと、そこには藤雅が立っていた。


嫌なタイミングだな。
藤雅のことは、まだ誰にも話していないのに。
柊だって、藤雅を見て驚いた顔してる。



「何してんだ?こんなところで。」


「…藤雅こそ何してるの?
今帰り?」


「ああ。
車からお前らしき人が見えたからな。」


「…そっか。
あ、紹介するよ。
この子は柊、バンドメンバーなの。
それで柊、この人は藤雅。
わたしの彼氏だよ。」


「こんばんは。」



一瞬、怪訝そうな顔をしたけれど柊はすぐにいつも通りの顔に戻っていた。


その反面、藤雅はイライラした様子で嫌そうな顔をしてる。
多分、わたしが男といるから。