「お前が外出たがらなくてよかった。」


「なんでよ。」


「お前のこと人に見られなくて済むから。
バンドの時は…お前、本当に輝いてるから俺としては妬いてる。」


「なにそれ~。
一応、最近は出演料とかも貰ってるから輝いてないと困るんですが。」



後ろから抱きしめてきた藤雅の頭を撫でる。
さらさらした手触りの中、同じ色に染めた部分だけ少し傷んでるのが分かる。も

でもそれが少し嬉しく思う。
藤雅の中にわたしがいるんだって実感して。
藤雅の綺麗な髪を傷ませて、わたしがいないときでも一緒にいる感じがする。
わたしも、ずいぶん藤雅にご執心だなあ。



「そういえば、藤雅。
今日はご実家に行くんでしょ?
そろそろ行かなくていいの?」


「もう少ししたらな。
…芽来も来ないか?」


「わたしはいいよ。
彼氏の実家なんて、そうそう行くものじゃないし。
わたしが行ったところで場違いよ。」



やることもないし、どこにいたらいいかも分からないし。
行っても気まずいだけ。
藤雅のことは大好きだし、受け入れてるつもりだけど…。
やっぱり、組自体のことは好きになれない。
藤雅のことを受け入れてるつもりなのに、その職業や稼業を受け入れられないのはまだわたしが未熟だってこと。