春風、漫ろに舞う

「あ、若!お疲れ様です!」


「若姐さん!お疲れ様です!」


「え…?」



ずらりと並んだ屋台の中から適当に見つけたりんご飴の屋台。
買おうと思って足を止めると、屋台の店員さんからそう声をかけられた。


え、なになに。
わたし知らないんだけど…。
藤雅の知り合い…?



「言っただろ、一条が運営してるって。
ここにある屋台の大半以上は組のもんだ。」


「え、そうなの?
てっきり裏方だけかと思ってた…。」


「ヤクザってのはこういうのにも関わってんだよ。」


「そうなんだ。」



全然知らなかった。
そりゃ当たり前か、わたしは一般人だし。

あ、お金払わなきゃ。
そう思って、ポケットからお財布を出そうとしていると。
わたしの腰に手を回していた藤雅は、お金も払わずにりんご飴を受け取っていた。



「え、お金は?」


「いいっすいいっす!
若姐さんもらっていってくだせえ!」


「え、あ…すみません…。」



ニコニコ笑いながら言ってくれるから。
断るのもなんだか申し訳なくて、そのままに受け取らせてもらうことにした。