「藤雅、今の…。」


「ん?」


「あ、ううん…なんでもない…。
ありがとう。」



お母さんになんて言ったんだろう。
藤雅と話している雰囲気を見るに、あのお母さんがこんなに簡単に引き下がるとは思わなかった。


それから、あの時間の隙間を埋めるかのように。
家に着くまで、藤雅といっぱいお話した。
時間が許す限り。



「芽来!」


「お母さん…。」



車から降りると、玄関のところで待ち伏せをしていたお母さん。

顔からしてめちゃくちゃ怒ってる…。


そのまま小言を言いそうな雰囲気だったけど、わたしと一緒に降りてきた藤雅を見た途端に。
お母さんは、顔色を変えた。



「先程はお電話にて失礼致しました。」


「ちょっと、芽来…!
このイケメンさんは誰なのよ、あんた!」


「えっ!?」


「やだ〜!もうカッコイイ子ねえ!
藤雅くんでしたっけ?
さっきはお電話ありがとねえ、うちの子が…。」



藤雅の肩をぽんぽん叩きながら。
にこにこ笑ってるお母さん。


そうだった。
お母さん、イケメン好きだった…。