「そんな顔しないでください。
俺の母親、一条に借金して飛んだんで。
天涯孤独だった俺を若が拾ってくれたんです。」


「…そうだったんですか…。」


「まだ中学生でしたから。
あの時、若に拾って頂かなければ…俺はどうなっていたか…。」


「…昔のことだ。」



わたしを肩に寄りかからせてくれている藤雅の顔は。
そう言いながらも、少し照れたようだった。

可愛い。
ちょっと照れくさかったのかな。


そんなことを呑気に思っていたら、わたしの携帯が鳴っていることに気がついた。



「わ、やば…。」


「どうした?」


「お母さんから…。
ごめん、1回出るね。…もしもし?」


『芽来!?やっと繋がった!
何してたのよあんた!』


「ご、ごめん…。」



家を出たのがお昼前。
気づけば、外は真っ暗だ。
ちらりとスマホの時計を見れば、夜の8時を回ったところだった。


色々ありすぎて、てっきり忘れてた…。
電話を出る時に、履歴を見るとお母さんから沢山の着信とメッセージが来てた。