「久しぶりだね、芽来ちゃん。」


「お久しぶりです、芽来さん。」


「…お久しぶりです…。」



十葵と、運転してくれている蒼樹さんに。
小さくそう返すと、窓の外に目を向けた。


どこに行くんだろう。
半袖で来ちゃったし、財布も忘れちゃった。
待たせるのも何だか怖かったから、とにかく急いで来たのが裏目に出た。



「芽来ちゃんの事を責める気は無いよ。
一条組若頭の女なんて、ただの女子高生には荷が重すぎるからね。」


「…わたしも、そう思います。」


「俺や蒼樹含め、組の人間は。
組長や姐さん、若頭の事は…命に替えても守らなければならない。」



いつもは、軽い調子で少しふざけた雰囲気のある十葵が真剣な顔でそう話す。


車内の空気は重々しくて、今すぐにでも降りたくなる。