『ごめん、いきなり連絡して。
今、芽来ちゃんの家の前にいるんだ。
出てきてもらえないかな?』


「えっ、家の前…?」



家の前にいるって言ったよね今。
どういうこと?


そう思いながら、カーテンを開けると。
前に見たあの黒い車に寄りかかりながら、電話をしている十葵と目が合う。


なんか手振ってるし…。
わたしは全然そんな気持ちじゃないよ。
なんか気まずいし…。



「いや、無理ですよ…。」


『大丈夫、藤雅に会えって言ってるわけじゃない。
ただ…見て欲しいんだ。』


「見るって何を…。」


『その説明は車でするから。
…とりあえず来てくれるかな。』



明るい十葵の声から一転。
低く、有無を言わせない声で言われたから。
半袖Tシャツにスウェットというラフすぎる格好から着替えもしないで、鍵と携帯だけを持って家を出た。