不器用女子は、落とされる。


は?

「は?」

心の声と発する声が一緒になった。
今、なんて?

私の反応を見て、速川はさらに顔をくしゃりと歪める。

「勝手に勘違いしてるけど、俺がこうやって口説くのはお前だけだし、こんな寒い中わざわざ待ってるなんて事はしない。」

「いや、でも」

「でもじゃない。俺が好きなのはお前なんだよ。なのに、何度アピールしても気づかないし、お前があいつの彼女って知ってガチ凹みしたし。でも、あいつが馬鹿で良かった。これで俺は葵を本気で落とせる。」

「何言って…」

「俺、容赦しないから。」

いつもはへらりと笑う速川が、真剣な顔をしていて、少しだけ心臓がはねた。

「これ、巻きなよ。」

速川は自分の巻いていたマフラーを私の首に巻きつけて去っていった。