『副社長、おはようございます。昨日の件で、午後一時から会議をという話になっています。瑞穂さんとご一緒のところ申し訳ないのですが……』

「ああ、大丈夫だ。わかった」

半ば投げやりに答え、通話を切る。

昨日、順調にいけば仕事は二時前には終わるはずだったが、国際法務部の書類不備でトラブルになり、話し合いが大幅に延びてしまったのだ。

今日もきっと休みは返上だろうとは思っていたが、瑞穂がいないならたとえ休みだとしても意味がない。

このまま追いかけて日本に帰ることもできない。

まだここでの仕事は一週間残っているし、そのあとはタイにマレーシアだ。

昨日の件が片付かなければ、ハワイでの滞在はさらに延びるかもしれない。

帰ったら瑞穂に何と言えばいいんだろう。

瑞穂の気持ちも考えず、あんなふうにがむしゃらに抱いて……

ひどい男だと思われただろう。

もしかしたら愛想をつかされたかもしれない。

二年を待たず離婚を切り出されるかもしれない。

絶望的な気分になりながら、とにかく洗面台で顔を洗う。

どのみちこのままではいられない。

こうなった以上、瑞穂とはきちんと話をしなければならないのだ。

早く日本に帰れるよう仕事に集中しなければ。