瞼の裏が眩しくて、ゆっくりと目を開けた。

隣で眠っていたはずの瑞穂の姿はなく、ひとり分空いた白いシーツが目に映る。

「瑞穂……?」

起き上がり、ベッドサイドの時計に目をやる。

時間は九時過ぎ。

どこへ行ったんだろうか。リビングか、シャワーか……

ベッドから降り、シャツを着てリビングへと向かう。

「瑞穂?」

呼びかけてみるも、瑞穂の姿はどこにもない。

シャワールームからも音はしない。

そしてふと、昨夜ソファの脇に置かれていたはずの瑞穂の荷物が見当たらないことに気づいた。

……もしかして出て行ったのか?

顔を平手打ちされたような衝撃が走り、頭を抱えてしゃがみ込む。

昨夜、潤んだ目で俺を見つめ『抱いて』と言った瑞穂に、俺の理性は崩壊した。

瑞穂の意識がなくなってしまうくらいに、何度も何度も夢中で彼女を抱いた。

だが、瑞穂はただ酔って人恋しくなっていただけで、本当はあんなことをしたくはなかったんだろう。

もしくは、妻として義務を果たさなければならないと思ったのかもしれない。

俺のほうは素面だったというのに、後先考えずなんてことを……

自分の両手を見つめる。

まだ残っている。瑞穂をこの手で抱きしめた温かさ。

「何をしてるんだ、俺は……」

長いため息を吐くと、テーブルの脇に置いたカバンの中でスマホが甲高い音を発した。

着信表示は『春海』だ。