昨夜は斗真さんの仕事がおしていてディナーに間に合わなくて……ううん、違う。

斗真さんは仕事だと嘘をついて彼女と一緒にいたんだった。

それで、私は寂しくて部屋でワインを飲んで酔っ払って、そしたら斗真さんが帰ってきてベッドに運んでくれて……

え?あれは夢だったんじゃなかったっけ?

昨夜の記憶がどんどん湧き出てよみがえってくる。

斗真さんのぬくもり。乱れる息。止められない甘い声。体が繋がった時の痛みと、それに反して感じた幸せな気持ち。

夢じゃなかったの!?

体を横にしたまま背中をずらし、斗真さんの隣から少しずつ後ずさる。

シーツに擦れる感覚で、自分が一糸まとわぬあられもない姿であることに今さら気づく。

斗真さんも、よく見れば掛布団から出ている胸よりも上は裸体だ。

『斗真さん、もっと……』

『瑞穂、きれいだよ』

ああああああ。

声にならない声が震えるようなため息になって漏れる。

彼は安らかに寝息を立て、私が動いてスプリングが軋んでも目を覚ます気配はない。

どうしよう。

斗真さんが起きたらなんて言えばいいの。反応が怖い。


……うん、逃げよう。

あっさりと結論を出し、そっとベッドから降りる。

ベッド脇に脱ぎ捨てられた洋服を見つけていたたまれない気持ちになりながら、それを抱えてリビングへ移動する。

荷物の整理もそこそこに部屋を出て、そのまま私はタクシーに乗り空港へと走ったのだった。