2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません

ぼんやりと電話の着信音が聞こえてくる。

それが少しずつ鮮明になっていって、ハッと目を覚ました。

お腹がいっぱいになってソファに横になったら、そのまま眠ってしまったようだ。

テーブルの上で、私のスマホが音を上げながら震えている。

画面に表示されているのは斗真さんの名前だ。

慌てて手に取り、画面をスワイプした。

「もしもし?斗真さ——」

『すまない、瑞穂』

私の声を遮り、斗真さんの少し早口の声が耳を震わす。

『何度か電話したんだが、寝ていたか?』

「はい、すみません。時差ボケみたいで」

どのくらい眠っていたんだろう。

壁の時計を見ると、針は六時を指している。

え?六時……って夕方の六時だよね。

斗真さんは、お昼過ぎには来るはずだったのに。

『仕事がおしていて、今日は遅くなりそうなんだ。ディナーはクラブラウンジを予約してある。そこで食べてくれ』

寝ぼけた頭が一気に冴える。

窓の外に目をやると、空はピンクとも黄色ともとれない幻想的な色に染まり、海はそれを映すようにオレンジに光っている。

夕日、沈んじゃう……一緒に見たかったのに。

寂しいけど仕方がない。斗真さんは仕事なんだから。

それに、明日と明後日は一緒にいられるはずだ。

今日は我慢しよう。

「わかりました。お仕事お疲れ様です。こちらのことは気にしないで――」

『斗真、電話中?』

電話の向こうに聞こえた女性の声に、ドキンと胸が跳ねた。

『ああ、それじゃあ、また連絡する』

プツリと電話が切れ、無機質な不通音が鳴り続ける。