「私がお昼休憩で外に出た時にね、ウロウロしてて。警察呼ぼうかと思ったんだけど、その時ガタイのいい男の人が坂本さんに声かけてね。坂本さんは青い顔して逃げていったの。瑞穂、斗真さんにボディーガードでもつけられてるの?」

「まさか」

笑いながらも顔が引き攣るのを感じる。

心配性の斗真さんでもさすがにそこまではしないだろうと思うけど……

亜矢に真顔でそう言われると自信がなくなってくる。

だけど、斗真さんに『私にはボディガードがついてるんですか?』とは聞けないな。

違ったら恥ずかしすぎる。

「でも、もう大丈夫だと思うよ。さすがに坂本さんもあきらめるでしょ。どっちにしても、マスターも私も斗真さんもついてるんだしさ」

頼もしくそう言った亜矢に、嬉しくてうなづいた。

「うん、そうだね」

坂本さんがしたことは一時の気の迷いだろう。

今までお店の常連さんだっただけに後味は悪いけど、仕方がない。

心配してくれる亜矢には絶対に言えないけど、あれから斗真さんとの距離が近づいたことは坂本さんのおかげだな、と少しだけ感謝している。