警察に相談するように言ったら、瑞穂は表情に躊躇いを滲ませた。

『坂本さん、そんなに悪い人じゃなかったと思うんです。いつもは穏やかで気さくな方で……』

『この期に及んであいつをかばうのか』

頭に血が昇り、信号待ちで車を停めると同時に、瑞穂に唇を押し付けた。

呼吸を止めた瑞穂から戸惑いがひしひしと伝わってきて、俺は何をやっているんだと即座に後悔した。

どうすればいいのかわからず、心臓が暴れるのを隠し、ポーカーフェイスでまた車を走らせた。


帰宅後、疲れているであろう瑞穂に寿司の出前を取ることを提案したが、瑞穂は首を横に振って明るく笑った。

無理やり明るく振舞ったというほうが正しいだろう。

「助けてくれたんだから、お礼がしたいです。斗真さんの好きなもの、なんでも作りますから」

瑞穂はそう言ったあと、「あ」と声を漏らす。

「私の料理よりお寿司のほうがおいしいですよね」

瑞穂は小さく苦笑いを浮かべた。

瑞穂が俺のために作ってくれる料理のほうが、よっぽど美味しいに決まってるのに。

「瑞穂が疲れていないなら、瑞穂の手料理が食べたい」

頭にポンと手を乗せると、瑞穂は屈託なく笑った。

そんな瑞穂のことが愛おしくてたまらなかった。

もう一度キスしたい衝動に駆られたのを、すんでのところでなんとか止めた。