翌日、居ても立ってもいられなかった俺は、春海をなんとか説き伏せて仕事を早く切り上げた。

瑞穂の店のそばまで行くと、スーツ姿の中年の男の姿があった。

彼はしきりに腕時計を気にしながら店の裏のほうを行ったり来たりしていた。

そして時折、何が面白いのかにやりと口角を上げ、肩を揺らして笑う。

その姿はあまりにも挙動不審で、こいつは本当に瑞穂の恋人なんだろうかと疑念を抱いた。

しばらく様子を見ていたら、男の電話が鳴った。

『ああ、今日は遅くなる。帰りは深夜になるかも。夕飯はいらないよ。うん、先に寝てて』

途切れ途切れに聞こえる声。

なんだこいつ。既婚者なんじゃないのか?

しかも『帰りは深夜になるかも』というのはどういうことだ?

瑞穂をどこに連れていくつもりなんだ。

猜疑心を強くしていく中、仕事が終わった瑞穂が裏口から出てきた。

男が瑞穂の腕を掴むと、彼女は恐怖に満ちた顔をして、俺の疑念は確信に変わった。

こいつは瑞穂の恋人なんかじゃない。瑞穂に一方的に好意を抱いているストーカーなのだと。